日本の誇り・鉄道技術 その2

 

 今さら何を驚いているのだ?と笑われそうだが、先日、東京駅から東海道新幹線に乗ろうとして本当に驚いた。

予定よりかなり早く駅に着いたので、売店でビールとおつまみを購入し、ホームで見るともなく発車していく新幹線を眺めていた。

 島型ホームなので、左右から発車していく。左からは博多行きや広島行きといった遠方系の「のぞみ」が、右からは新大阪行きの「のぞみ」がそれぞれ20分おきに発車していく。

左右交互に発車していくので、ホームとしては10分おきに「のぞみ」が発車していくことになる。折り返し運転なので、「のぞみ」が到着して客がすべて降りると車内清掃の係員が手早く清掃し、椅子の方向を変え、ヘッドレストのカバーを交換し、ホームで待っている客を乗せてあわただしく発車していく。しかも乗車率は低くない。ホームにあふれていた人たちが乗って発車していって少しはすいた、と思ったらもう次の乗車待ちの長い列ができている。これが右、左、右、左と延々と繰り返される。駅員のアナウンスも「まだ乗れません、もうちょっと待ってね」「お待たせしました、もう乗れるよ」「発車するよ、見送りの人、下がってね」という意味のことがこれまた大音量でずっと繰り返されている。見ているだけで疲れた。

すごいもんだね、と感心していたがそこでハタと気が付いた。まだほかに「ひかり」や「こだま」があるじゃないか。一体一時間に何本発車しているんだろう?後日調べたら、なんと15本!平均して4分ごとに発車していることが分かった。

 

 よくどこの国のどんな列車が時速何キロを出したとかニュースになる。主役はもっぱら日本の新幹線とフランスのTGV。しかし本当に新幹線がすごいのは、完璧な列車運行システムだと私は思っている。

 一時間に15本というのは最大値だが、10本としても6分おきであり、通勤電車並みの間隔かつ高速で走行する列車を安全に運行させるのは並大抵の技術ではないと思う。

 新幹線運行管理システム、列車集中制御装置、新幹線情報管理システム、通信情報制御監視装置、自動列車制御装置などが整備されるとともに、運転指令業務をおこなう総合運転指令所は東京と大阪の2か所にあり、同じ機能、レイアウト、集中管理システムを持つことによってどちらかの指令所がダウンしても大丈夫なように二重系化されている。

 このような完璧な運行システムがあるからこそ、新幹線の大きな誇りの一つである「1964年の開業以来列車事故による死亡ゼロ」が現在も継続できているのだと思う。

 台湾高速鉄道において、日本の新幹線がフランス・ドイツ連合を差し置いて採用されたのは、新幹線は高頻度での大量輸送を実現していること、台湾でも懸念される地震対策について日本国内での実績を持っていることなどが評価されたと伝えられている。

 しかしながら台湾高速鉄道の欠点は、車両は日本製、分岐器はドイツ製、列車無線はフランス製というようにシステムが混在してしまったことだと私は思っている。優秀な列車を走行させるには優秀な制御システムが必要であり、それらを別々に調達したのでは総合的な力を発揮させられないと思う。

 

 日本の鉄道会社は日々研究を重ね技術は止まるところを知らず進歩している。もはや進化と言ってもいいかもしれない。

 鉄道技術の研究開発費に国の補助金が入っているかどうか私は知らないが、鉄道会社が経営上の問題から研究開発費を縮小せざるを得ない、などということがあってはならない。

 たとえば、開業時の東海道新幹線は東京・新大阪間に安全上の徐行区間があったため4時間かかっていた。翌年には徐行区間が解除され3時間10分となり、現在では2時間25分で結ぶ。ここに至るまでの開発費用はかなりな額にのぼると思われるが、将来さらに15分、20分と短縮するのはこれまでとは桁違いの困難が伴い、車両と運行システムにこれまで以上の膨大な研究開発費用をつぎ込まなくては実現できないように思う。

 これをJRにまかせてしまうと「20分短縮するためだけにこんなに大金をつぎ込まなくてはいけないのか」という議論に行きつく。研究開発をストップするようなことはないだろうが、「同じ大金をつぎ込むなら、全く新しいシステムであるリニアモーターカーにつぎ込むべき」となってしまうことを懸念する。

 国は新幹線の車両と運行システムをパッケージとした輸出を先頭を切って促進し、利益をJRに還元することによって研究開発の継続を促すべきだと思う。

 

 

 航空機の現状を見ればおわかりだろう、船舶、航空機、鉄道の技術は国力に直結する。

  2014.05.25

 

 

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